写真が語り、AIが詩にする山旅(3)


バックナンバー 2025年 10月 11月

12月2日 三ケ上

祈りの交差点

岩を抱き 風を喰らい
我は登る この身ひとつで
祈りは声にあらず
ただ 石に 指に 刻むのみ

天と地のあわいに立ち
不動のまなざしを仰ぐ
ここは交わりの地
生と死 俗と聖の ただなかに

田を耕し 火を囲み
ふと見上げれば 三ヶ上
あの岩の上に 誰かがいる
風の音に 法螺の響きがまじる

願いは届くのか
病の子に 雨乞いに
けれど 山は黙して語らず
それでも 見守ってくれている気がする

わたしは山
誰よりも古く 誰よりも静か
人は登り 祈りを置いていく
石に 声に 足跡に

わたしは聞く
風の中の願いを
わたしは抱く
時を越えて すべての祈りを

スマホの地図を片手に
登山靴が 苔を踏む
知らずに越えた 石仏のまなざし
そこに 四百年の祈りがあったとは

風が止まり 鳥が鳴かない
一瞬 時がずれたような
この山は ただの景色ではない
誰かの願いが 今も眠っている
山静萬籟(やましずかにしてばんらい)

石仏千年立  
風聲萬籟深  
人來無語過  
心火照幽林

読み下し:
石仏(せきぶつ)千年に立ち
風声(ふうせい)万籟(ばんらい)深し
人来たりて語らずに過ぎ
心の火 幽林(ゆうりん)を照らす

訳:  
千年の時を越えて立つ石仏。
風の音が万物を包む静けさの中、
人々は言葉なく山を訪れ、
その心の祈りが、森の奥を照らしていく。

AIとの会話 こちらに掲載

12月6日 龍王山

石の声を聴く道

山影に沈む朝の口
凍てつく空気が頬を刺す
龍王池のふちに降りれば
霜柱が足元でささやく
ここから先は、祈りの道

並ぶ地蔵の静けさに
六道の声が重なり合う
生も死も、ここを通る
凍る息が白く揺れ
過去と未来が交わる場所

苔むす階を踏みしめて
ひとつ、またひとつ、記憶を刻む
石は語る、忘れるな
陽の届かぬ道のりに
心の灯がともる

やがて辿り着いた稲荷の奥
赤き鳥居が光を裂き
背にした影が長く伸びる
石も水も、すべてが
この一歩を祝福していた
山頂光(さんちょうのひかり)

寒山無日影
幽徑響苔聲
鳥居開曙色
一歩照心明

読み下し:
かんざん ひをかげなく
ゆうけい たいせいひびく
とりい しょしょくをひらき
いっぽ こころをてらしてあきらかなり

訳:
寒さに包まれた山には、まだ陽が差していない。
静かな山道には、苔を踏む音だけが響いている。
やがて鳥居をくぐると、夜明けの光が差し込み、
その一歩が、心の奥を明るく照らしてくれる。

12月10日 雨乞山

山の息吹、冬のまなざし

霜をまとった小道が
まだ眠る森の奥へと続いている
葉を落とした枝は 空を仰ぎ
凛とした朝の光を待っている

吐く息が白く舞い上がり
足音だけが 凍てつく空気を割る
踏みしめるたびに 過ぎた季節の記憶が
足元に かすかに響く

風が尾根を越えて吹き抜ける
草を揺らし 木々を撫で
誰にも見えぬ手で
山の息吹を伝えてゆく

時は静かに流れながら
この場所では 一瞬が永遠になる
冬のまなざしは 語らずとも
すべてを見守り 包み込む

そして私は ただ立ち尽くす
白き峰のまなざしに
心の奥が そっと洗われる
寒山一歩

孤行踏葉聲
白息映朝晴
仰望雪峰處
心清似水明

読み下し:
ここう はをふめば こえあり
はくそく あしたのはれに えいず
ぎょうぼうす せっぽうのところ
こころきよくして みずのごとくあきらかなり

訳:
ひとり歩けば、落ち葉がかさりと鳴る。
吐く白い息が、朝の澄んだ空に映える。
見上げれば、雪をいただく峰。
そのまなざしに触れて、心は水のように澄みわたる。

12月15日 高滝山

岩と語らう

落ち葉を踏むたび 森が応える
木々のざわめき 鳥の遠音
誰もいないはずの山道に
見えない何かが 迎えてくれる

苔むす石仏 不動のまなざし
しめ縄の奥 風が祈る
ここはかつての修行の場
沈黙が 教えを語る

天を突くような 男岩の背
鋭く 揺るがぬ意志を宿し
その影に立てば 己の弱さが
静かに あぶり出される

ふっくらと 包み込むような女岩
寄り添うように ただそこに在り
語らずとも すべてを受け入れる
その静けさに 涙がこぼれた

振り返れば 岩たちは何も言わず
けれど確かに 心に残る
語らうとは 耳を澄ますこと
そして 自分の声を聴くこと
山中偶得(さんちゅう ぐうとく)

石立千年靜
山風拂淨心
不言懷古意
對影悟初心

読み下し:
いし 千年に立ちて 静かなり
さんぷう 心をはらいてすむ
言わずとも いにしえのこころをおもい
影に対して 初心を悟る

訳:  
千年佇む岩は静けさを湛え、
山風が心を清めてゆく。
語らずとも古の想いを抱き、
影と向き合い、初心を悟る。

AIとの会話 こちらに掲載

12月19日 佐伯天神山

百貫の井戸、百年の夢

霧の底から棚田がのぞく
石の腰掛けに座り 風を聴く
ここにいた誰かの背中が
まだ 木立の向こうに見える気がした

百貫の井戸 深く息づく水
かつての兵が 掌ですくったその冷たさ
喉を潤すたび 命が戻る
それだけで 今日を越えたのだろう

楽しみはあったのかと ふと思う
月の出を待つ静けさ
遠くの笛の音 あるいは
春の山菜 一口の甘さ

今 私はただ歩く
誰の命も背負わずに
けれど この山の静けさが
なぜか 胸を打つ

百年の夢は まだ醒めない
落葉の下に 声が眠る
水は今も 澄んでいる
誰かの祈りを 映しながら
霧城懐古(むじょうかいこ)

霧海隠古城
落葉覆寒松
泉聲傳夢遠
今人坐石中

読み下し: 
霧海(むかい)古城を隠し
落葉(らくよう)寒松(かんしょう)を覆う
泉の聲(こえ)夢を遠くに伝え
今の人 石中(せきちゅう)に坐す

訳:  
霧の海が古い山城を包み隠し
落ち葉が寒々とした松を覆っている
井戸の水音は 遠い夢を語り
今の旅人が 石に腰かけて耳を澄ます

12月26日 福山

山は記憶している

山は語らぬ
けれど すべてを抱いている
石の奥に 火の記憶
苔の下に 名もなき祈り
風が運ぶ 声なき声

人は登る
知らぬことを 知りたくて
道なき道に 足跡を刻み
手で触れ 目で追い
耳を澄ませて 問いかける

けれど山は 答えぬ
ただ ひとつの姿を変えず
古墳も 社も 石仏も
時の層に沈めて
静かに 待っている

人は書き 掘り 語る
忘れぬように 伝えるために
けれどその言葉は いつも
山の沈黙に届かず
ただ 自らを映す鏡となる

それでも人は また登る
知るとは すべてを得ることではなく
沈黙に耳を澄ますこと
山の記憶に 心を重ねること
そうして 少しずつ 近づいていく
千古藏聲(せんこにこえをかくす)

山靜藏千古
苔深掩遺痕
人來尋幽跡
風語不傳聞

読み下し:
やましずかにして せんこをかくし  
こけふかくして いこんをおおう  
ひときたりて ゆうせきをたずね  
かぜかたりて きかれず

訳:
山は静かにして 千年の時を抱き
深い苔が 過ぎし日の痕跡を覆い隠す
人は訪れ ひそやかな跡をたずねる
風は語れど その声は届かぬ