祈りの交差点
岩を抱き 風を喰らい
我は登る この身ひとつで
祈りは声にあらず
ただ 石に 指に 刻むのみ
天と地のあわいに立ち
不動のまなざしを仰ぐ
ここは交わりの地
生と死 俗と聖の ただなかに
田を耕し 火を囲み
ふと見上げれば 三ヶ上
あの岩の上に 誰かがいる
風の音に 法螺の響きがまじる
願いは届くのか
病の子に 雨乞いに
けれど 山は黙して語らず
それでも 見守ってくれている気がする
わたしは山
誰よりも古く 誰よりも静か
人は登り 祈りを置いていく
石に 声に 足跡に
わたしは聞く
風の中の願いを
わたしは抱く
時を越えて すべての祈りを
スマホの地図を片手に
登山靴が 苔を踏む
知らずに越えた 石仏のまなざし
そこに 四百年の祈りがあったとは
風が止まり 鳥が鳴かない
一瞬 時がずれたような
この山は ただの景色ではない
誰かの願いが 今も眠っている
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山静萬籟(やましずかにしてばんらい)
石仏千年立
風聲萬籟深
人來無語過
心火照幽林
読み下し:
石仏(せきぶつ)千年に立ち
風声(ふうせい)万籟(ばんらい)深し
人来たりて語らずに過ぎ
心の火 幽林(ゆうりん)を照らす
訳:
千年の時を越えて立つ石仏。
風の音が万物を包む静けさの中、
人々は言葉なく山を訪れ、
その心の祈りが、森の奥を照らしていく。
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