写真が語り、AIが詩にする山旅(2)


バックナンバー 2025年 10月

11月2日 星山

雲の下、星の上

足元に広がる雲の海
まるで空を歩いているみたい

風はやさしく
木々は静かに
「よく来たね」と言ってくれる  

遠くの山も、近くの葉も
すべてが今日の光に包まれて
心の中まで
すっきり晴れていく

星山のてっぺんで
空と友達になった気がした
雲の下に日々があって
星の上に、今の私がいる
五言絶句

雲海足下広
風音枝上微
誰知紅実在
静待一人来
山頂に立つと、足元には一面の雲の海が広がっている。 静かな山の中、枝の上でそよぐ風の音がかすかに聞こえる。 誰が知っているだろう、この場所に赤い実がひっそりとあることを。 その実は、何も言わず、ただ静かに誰かが来るのを待っている。

朝霧の中、星山を登る。足元には雲の海、空を歩いているような心地。風の音が枝を揺らし、静けさが背中を押す。あの紅い実は、今日も山頂で待っているだろうか。誰にも見つけられず、ただ静かに。その姿に会いたくて、また一歩。

11月5日 泉山 滝めぐり

滝の四重奏、泉山の調べ

火のしずくが 岩を撫でて
朝の気配を そっと染める

十六夜の流れは 月の残り香
夜の夢を 静かに運ぶ

二の流れは 木々の間をすり抜け  
葉のささやきと 戯れる

中林の水音は 深緑の奥で
誰にも聞こえぬ 古い歌を奏でる

泉山の道を歩けば
音なき音が 心に染みてくる
秋水朝光吟

紅葉滴寒泉(こうよう かんせん にしたたる)
銀波映朝光(ぎんぱ ちょうこう にうつる)
風過林聲細(かぜすぎ りんせい ほそし)
幽流響古墳(ゆうりゅう こふん にひびく)

紅葉が冷たい泉に滴り、
銀の波が朝の光を映す。
風が過ぎれば、林の音は細く、
幽かな流れが古き地に響く。

泉山を朝に登る。空気は澄み、陽射しが紅葉を照らして色彩が際立つ。火のしずくのような水音が岩間から滴り、銀の流れが朝光を映してきらめく。風が林をすり抜け、葉の音が耳に優しい。中林の奥では、静かな水の響きが古い記憶を呼び起こすようだった。四つの流れがそれぞれの声で語りかけてくる。歩みを止めるたび、自然が詩のように心に染みてくる。秋の水音は、静けさの中に命の調べを宿していた。

AIとの会話も面白い こちらに掲載

11月11日 牛曳山〜毛無山

山笑う、秋の声  

T 白樺の影 
白き幹が並ぶ森  
色づく葉も  
山影に沈み  
風も光も  
まだ遠い  
秋は静かに  
足音を忍ばせていた  

U 滝の目覚め  
水の音が  
岩を砕きながら落ちる  
しぶきが空気を揺らし  
木々がざわめき始める  
秋の気配が  
ひとつ、またひとつ  
目を覚ます  

V 光の尾根へ  
陽が差した  
一斉に色づく木々  
赤、黄、橙、緑  
まるで山が笑ったように  
「ここにいるよ」と  
光の中で  
秋が歓びを歌っていた  

W 下山の道 
踏みしめるたびに  
葉が鳴る  
カサコソ、カサコソ  
それは山の笑い声  
「またおいで」と  
夕陽が背中を押す  
秋の声は  
別れの中に  
やさしく残る
紅葉喚山聲

白樺幽林靜
飛泉喚木聲
紅葉舞峠路
山笑留秋聲

白樺 幽林 静かなり 
飛泉 木声を喚ぶ 
紅葉 峠路に舞う 
山 笑いて 秋声を留む

起:白樺林の静けさ
承:滝の音が木々を目覚めさせる
転:光の尾根で紅葉が舞う
結:山が笑い、秋の声が余韻として残る

11月17日 花見山

光の粒を踏みしめて

光の粒を踏みしめて
落ち葉の道をゆく
誰かが通った気配だけが
風に揺れて残っている

枝の隙間からこぼれる陽
それは 山がくれた贈りもの
静けさの中に 季節が息づく
わたしも その一部になる

光の粒を踏みしめて
ひとつだけ咲いていた花に出会う
まわりは枯れ葉 静かな土
それでも その花は笑っていた

「ここにいるよ」と
誰にも届かない声で
わたしは その声を聞いた気がして
しゃがんで そっと見つめた

光の粒を踏みしめて
白いススキが揺れる午後
遠くの山は 青くかすみ
時間がゆっくりほどけていく

足元に広がる やわらかな光
それは 今日という日の記憶
誰にも言わずに持ち帰る
心の奥に そっとしまって
踏光秋路(とうこうしゅうろ)

落葉踏光粒
静花笑土中
遠峰浮白穂
心懐秋風情

読み下し文

落葉(らくよう)に光の粒を踏みしめ、
静かなる花、土の中に笑む。
遠き峰には白き穂浮かび、
心に秋風の情を懐(いだ)く。

朗読用

落ち葉を踏んで、光の粒が舞います。
ひっそりと咲く花が、土の中で
微笑んでいます。
遠くの山には、白い穂がふわりと
浮かび、
わたしの心には、秋の風の情が
そっと宿ります。

11月20日 下蒜山

空と地のあいだで

空と地のあいだで
私はただ、
草をかきわける風のように
歩いていた

雲は遠く、
山は黙して
何も語らぬけれど

足元の土が
「ここにいた」と
そっと教えてくれた

空と地のあいだで
私は空を見上げなかった

見上げれば
帰りたくなってしまうから

だから私は
地を見つめて歩いた
草の色、石のかたち、
それだけが
今日の私をつなぎとめていた

空と地のあいだで
私はひとつの影になった

陽が背を押し
草が足をほどき
山が私をのみこんでいく

それでも私は
消えずにここにいた
風の音と
同じ速さで
山気清晨(さんきせいしん)

孤影随風起
山声入夢清
不語行人跡
但留朝光痕

読み下し文:
こえい かぜにしたがいておこる
さんせい ゆめにいりてきよし
かたらず こうじんのあと
ただ のこす ちょうこうのあと

訳:  
ひとつの影が風に乗って立ち上がり、
山の声が夢のように澄んで響く。
歩いた跡は語らず、
ただ朝の光の痕だけが残る。

AIとの会話 こちらに掲載

11月29日 三平山

陽だまりの稜線

落ち葉を踏むたびに
季節が音を立ててほどけていく
冷たさの中に
陽のぬくもりが
そっと背を押す

風は眠り
空は澄みきって
草の影が道しるべになる
ただ歩く
それだけで心がほどけていく

赤い実が空を見上げ
種は旅立ちの時を待つ
静けさの中に
命の鼓動が
確かに響いていた

ふわり
ひとつ舞い上がる
それは別れではなく
始まりの合図
山が見送る 小さな旅立ち
稜線日和(りょうせんびより)

寒光和暖歩
紅実映晴空
綿種随夢去
幽山不語情

かんこう あたたかにして あるく
こうじ せいくうにえいず
めんしゅ ゆめにしたがいて さる
ゆうざん かたらずして じょうあり

訳:  
冷たい光の中、陽だまりに導かれて歩む
赤い実が澄んだ空に映える
綿毛の種は夢に導かれ旅立ち
静かな山は語らずとも情を湛える