光の粒を踏みしめて
光の粒を踏みしめて
落ち葉の道をゆく
誰かが通った気配だけが
風に揺れて残っている
枝の隙間からこぼれる陽
それは 山がくれた贈りもの
静けさの中に 季節が息づく
わたしも その一部になる
光の粒を踏みしめて
ひとつだけ咲いていた花に出会う
まわりは枯れ葉 静かな土
それでも その花は笑っていた
「ここにいるよ」と
誰にも届かない声で
わたしは その声を聞いた気がして
しゃがんで そっと見つめた
光の粒を踏みしめて
白いススキが揺れる午後
遠くの山は 青くかすみ
時間がゆっくりほどけていく
足元に広がる やわらかな光
それは 今日という日の記憶
誰にも言わずに持ち帰る
心の奥に そっとしまって
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踏光秋路(とうこうしゅうろ)
落葉踏光粒
静花笑土中
遠峰浮白穂
心懐秋風情
読み下し文
落葉(らくよう)に光の粒を踏みしめ、
静かなる花、土の中に笑む。
遠き峰には白き穂浮かび、
心に秋風の情を懐(いだ)く。
朗読用
落ち葉を踏んで、光の粒が舞います。
ひっそりと咲く花が、土の中で
微笑んでいます。
遠くの山には、白い穂がふわりと
浮かび、
わたしの心には、秋の風の情が
そっと宿ります。 |