花影そよぐ稜線
曇り空のひかりが
稜線の草をやわらかく包み
風はまだ細く
道は静かに先へ伸びていた
歩き出すたび
山がひとつ息をするようだった
キキョウの影は
風の通り道を知らせるように揺れ
ワレモコウは
細い穂を静かに立てて
カワラナデシコは
ほつれた息づかいで道に寄り添っていた
花たちは
色ではなく、ただその形と息づかいで
今日の山の気配を伝えていた
立ち方も、揺れ方も、沈黙の深さも
それぞれの場所で
それぞれの時間を抱いていた
花影は道に寄り添い
稜線へ続くひとすじを
そっと示していた
曇りの日のやさしさが
歩く者の心を軽くしてくれた
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短歌
稜線の
草のさざめき 胸に触れ
花影たちは
名を持ちながら
声なく揺れる
ワレモコウ折句
わびしさの
れいのない影 夕まぐれ
もの言わぬ花
こころの底へ
うすく沈みぬ
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