写真が語り、AIが詩にする山旅(4)


バックナンバー   2025年 10月 11月 12月

1月3日 王子ケ岳

新しき朝、笑う岩のもとで

まだ眠る海が ほのかに息を吐く
空の端が 桃色にほどけて
草の露が 小さく震えるころ
私は 岩の道を登る
静寂が 足音を飲み込んでいく

ニコニコ岩が 朝の光を受けて
そっと 笑った
誰かを待っていたように
誰かを見送ってきたように
その顔は 風の記憶を抱いていた

岩屋窟の影に 祈りが残る
かつての行者が ここで見た空
そのまなざしをなぞるように
私は手を合わせる
新しい年の 静かな決意を胸に

瀬戸の海が 金色に染まり
島々が 光の中に浮かぶ
橋は遠く 人の営みをつなぎ
私はただ この一瞬に立ち会う
石と風と 朝陽の交わる場所で

笑う岩よ 今年もよろしく
あなたのように 穏やかに
あなたのように 揺るがずに
この一年を 歩いていけますように
心の奥で また笑顔が芽吹く
笑岩迎曙光(しょうがん しょこうをむかう)

笑岩朝日照
幽径露華香
海天開萬里
心静歩新章

読み下し:
笑岩(しょうがん)に朝日照りて、
幽径(ゆうけい)に露華(ろか)香(かんば)し。
海天(かいてん)萬里(ばんり)に開け、
心(こころ)静かに新章(しんしょう)を歩む。

訳:  
笑う岩に朝日が差し、
静かな山道に露の香りが漂う。
海と空は遥かに開け、
心穏やかに新たな一歩を踏み出す。

1月7日 経山・鬼城山・高丸山

三つの峰、ひとつの道

朝の霧が 経山を包む
静けさのなか 踏みしめる土
かつての城の名残は 苔の下
誰かが守り 誰かが奪い
今はただ 風が見張りをする

尾根を越えれば 鬼の城
石垣が空を裂き 門が口を開ける
温羅の影が 陽に透けて
伝説と史が 重なり合う
私はその狭間を そっと歩く

高丸山の道は 言葉を持たない
ただ 木々が揺れ 陽が差し
名もなき静寂が 心を洗う
何も語らぬ山ほどに
深く 何かを教えてくれる

三つの山は それぞれの声を持ち
歴史 神話 沈黙
それらが 私の足元に重なり
ひとつの道となって
背中を押してくれる

振り返れば 峰が連なり
歩いた時間が 空に溶ける
風が頬を撫で 陽が笑う
私は ただの旅人ではない
山に名を呼ばれた者だ
三嶺行(さんれいをゆく)
 
山路踏苔滑
古城風語深
鬼門傳影在
孤客夢中尋

読み下し:
山路(さんろ)苔を踏めば滑らかに、
古城(こじょう)風(かぜ)語(かた)りて深し。
鬼門(きもん)影(かげ)を伝えて在(あ)り、
孤客(ここう)夢中(むちゅう)に尋(たず)ぬ。

訳:
苔むした山道を踏みしめると、
しっとりとした静けさが広がる。
かつての城跡には、風が語りかけるように
歴史の気配が満ちている。
鬼の門には、今もなお伝説の影が宿っている。
ひとり旅の私は、
その面影を夢の中で探し続けている。

1月12日 和気富士・竜王山

尾根を越えて、時を歩む

朝の光に 大題目岩が浮かぶ
その筆跡に 誰かの祈りを感じ
私はそっと 手を合わせた
旅の始まりに 心を澄ます

和気富士の尾根を登れば
北曽根の城跡が現れる
かつての戦の気配を踏みしめて
私は 静かに通り過ぎる

観音山の斜面に目をやれば
「和」の文字が 夏の夜を思わせる
あの火は 今も人々の心に
灯り続けているのだろうか

涸沢峰の風は 少し冷たく
尾根道は 私を試すように続く
けれど その先にある景色が
足を止めさせてはくれない

竜王の空に 光が満ちて
風が旅の記憶を運んでくる
見下ろす景色に 心がほどけて
歩いてきた道のすべてが
今 私の中で ひとつになる
登和嶺(とうわれい)

岩経千載語
火照一文字
登高無限意
心與山同止

読み下し:  
岩はせんざいの語(かたり)をへて
火は一文字(いちもんじ)を照らす
高きに登りて意(い)は限りなく
心は山とともに止(とど)まる

訳:  
岩は千年の語りを宿し、
火は「和」の一文字を照らす。
高みに登れば、思いは果てしなく広がり、
心は山とともに静かにとどまる。

1月16日 怒塚山・金甲山

もやにけぶる

もやにけぶる瀬戸の海
島々は声をひそめ
金甲の頂に立つ私は
風の中に耳を澄ます

怒塚の尾根を越え
去年はなかった鉄塔が
空にひとすじの違和感を描く
変わるものと、変わらぬもの

落ち葉に埋もれた林間の道
足元は見えずとも
風に揺れるテープが
「ここを行け」と手を振っていた

誰が結んだのだろう
誰がこの道を守ってきたのだろう
その静かな働きに
私はただ、ありがとうとつぶやく

そして、ふと目にとまる
赤く灯るヒヨドリジョウゴの実
久しぶりの再会に
胸の奥がふわりとほどけた

この山には、物語がある
甲を埋めたという伝説も
けれど今日、私が出会ったのは
人の手と自然が織りなす
やさしい時間の流れだった
山行感懐(さんこうかんかい)

霧海浮島影
幽徑落葉深
無名繋紅線
心謝路人心

読み下し:  
霧海(むかい)に島影(しまかげ)浮かび
幽径(ゆうけい) 落葉(らくよう)深し
名もなき者(もの) 紅線(こうせん)を繋ぎ
心に謝す 路人(ろじん)の心

訳:
もやの瀬戸に島影が浮かび、
静かな山道は落ち葉に埋もれる。
名も知らぬ人が結んだ赤いテープ、
その心に、私はそっと感謝する。

AIとの会話 こちらに掲載

1月21日 実僧坊山

Copilot

光の向こうに、冬がいた

順光の森は 静かだった
裸の木々が ただそこに立っていた

けれど 振り返った瞬間
世界は まるで別の顔を見せた

光の粒が 枝をなぞり
白い息のように 冬が浮かんだ
逆光見霜華(ぎゃっこうに そうかをみる)

林寒枝影薄
背日歩聲斜
回首光中見
霜華照嫩柯

読み下し:  
林は寒くして 枝影薄し
日に背を向けて 歩みの声斜めなり
首を回らせば 光の中に見ゆ
霜華 嫩(わか)き柯(えだ)を照らす

訳:
森は冷えきり 枝の影も淡く
太陽に背を向けて 足音だけが斜めに響く
ふと振り返れば 光の中に浮かび上がる
霧氷の花が 春を待つ若枝を照らしていた
Gemini

光の衣

凍てつく朝の訪れに
一本の木が身を震わせた
だがそれは萎(しお)れるためではなく
新たな衣を纏(まと)うため

一本一本の細い枝先に
白い氷の結晶が咲き誇る
春を待たずして開く
冬だけの神秘の花

朝日にきらめくその様は
まるで森に降る光の粒
音もなく広がる銀の奇跡に
呼吸さえも忘れて立ち尽くす
実僧坊山霧氷(じっそうぼうざん むひょう)

孤木戴氷冠 
不知何氏名
驚看寒朝景 
銀華映日明

読み下し:
こぼく ひょうかんを いただく
しらず なんの しめいぞと
おどろきみる かんちょうの けい
ぎんか ひにえいじて めいなり

訳:
ただ一本の木が、氷の冠を戴いている
その木が何という名なのか、私にはわからない
凍てつく朝のこの情景に、ただただ驚き見入る
銀の花(霧氷)が朝日に映えて、鮮やかに輝いている

1月28日 操山

葉陰に眠るものたち

カナメモチの道に入ると
世界はひとつ音を減らし
葉のざわめきだけが
案内役になる
  
古墳の入口は
闇ではなく
静かな呼吸のようで
わたしを拒まない
 
遠くの東屋から
町の気配がかすかに届く
けれどこの道では
すべてが遠い昔のようだ
 
葉陰に眠るものたちは
語らず、求めず
ただ、そこに在り続け
わたしの歩みを見守っている
操山古冢(みさおやま こちょう)

葉陰収世響
古冢吐寒風
千載無言在
静観往来人

読み下し文:
葉陰(よういん) 世の響きを収め、
古冢(こちょう) 寒風を吐く。
千載(せんざい) 言(げん)無くして在り、
静かに往来の人を観る。

訳:
葉陰は外の世界の音を吸い込み、
古い墳墓はひんやりとした風を吐き出している。
千年ものあいだ何も語らずそこに在り続け、
行き交う人々を静かに見守っている。