写真が語り、AIが詩にする山旅(7)


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4月2日 鬼城山

咲きながら、散りながら

白い花 空に咲き
枝を埋め 光あつめる
地にも白 降りしきり
咲くと散る ひとつの姿

紅の花 音もなく
ぽとり落ち かたちのままに
地に伏して なお香る
沈む色 語るいのち

風もなく 舞い落ちる
花びらが 道を染める
歩くたび 春は過ぎ
光ごと ほどけてゆく

咲くものと 散るものと
重なりて 春は満ちる
白と紅 風のなか
咲きながら 散りながら
春山花影重(しゅんざん かえい かさなる)

春山萬樹雪如雲
紅椿無聲墜石根
風靜櫻飛衣上舞
光斜影動路中分
空香不散連山氣
地色猶鮮映白雲
咲與落時同一瞬
花心深處在人聞

読み下し文:
春の山に万の木、雪のごとき雲の花
紅き椿は音もなく、石の根元に落ち
風なきに桜は舞い、衣の上に踊り
光は斜めに影を動かし、道を分かつ
空の香りは散らず、山の気とつながり
地の色はなお鮮やかに、白雲を映す
咲くと散るとは同じひととき
花のこころは深く、人の胸に響く

訳:
春の山には無数の木々が、雲のような白い花を咲かせ、
紅い椿は音もなく、石の根元に落ちている。
風がなくても桜は舞い、歩く人の衣に踊るように降る。
斜めに差す光が影を動かし、山道を二つに分ける。
空に漂う香りは消えず、山の気配とひとつになり、
地に残る色はなお鮮やかで、空の白雲を映している。
咲くことも散ることも、実は同じ一瞬のこと、
花のこころは深く、歩く人の胸にそっと響く。

4月5日 雨乞山

ひそやかに咲く

岩の影 ひとすじの光
苔のしずくを すくいあげ
わたしは そっと咲いたの
イワウチワという 名を持って

踏み跡は すぐに消え
風が道を 覆いかえす
けれど その奥に
イワウチワが 息をしていた

誰も来ぬ この岩のほとり
冬の夢を まだ引きずりながら
春は その名を知る者へ
ひとひらの花を 託してゆく

手を伸ばせば 触れてしまいそうで
ただ 見つめることしかできず
胸の奥に 咲いたもの
それもまた イワウチワ
幽花(ゆうか)

幽岩春氣早
苔潤珠滴小
誰識名猶在
巖陰一扇草

読み下し文:  
幽き岩に 春の気はやくし、
苔潤ひて 珠滴(しゅてき)小し。
誰か知らん 名はなお在り、
巌の陰に 一扇の草。

訳:  
ひそかな岩陰に、春の気が早くも満ち、
苔は潤い、小さな露が光る。
誰がその名を知ろうか、けれど確かに、
岩陰にひとつ、イワウチワが扇をひらく。

4月8日 朝鍋鷲ケ山・金ケ谷山

セリバオウレン、跳ねる光

茶色の世界に
ぽん、と置かれた白。

まるで
冬の終わりを待ちきれず、
ひとりで飛び出した
小さな光。

陽が差すと
花びらの先が
子どものように跳ねて、
山の空気まで
軽くしてしまう。
舞春(まいしゅん)

枯海浮微雪
幽林未解氷
芹花先舞笑
光跳入山心

読み下し文:
こかいにびせつうかぶ。  
ゆうりんいまだこおりをとかず。
きんかまずまいえむ。  
ひかりさんしんにとびいる。

訳:
枯れ葉の海に、
ほのかな雪のような白が浮かび、
深い林はいまだ氷を解かず。
セリバオウレンの花が
誰より先に舞い笑い、
その光は
山の心へと跳びこんでいった。

4月14日 森林公園

春の声、地より天より

湿地に立つ
白い花が
水の鏡に
春の名を記す

裸の枝に
白が灯る
葉より先に
空へ向かう声がある

遠くの山は
まだ冬の名残を抱き
けれど
光は確かに
稜線を撫でていた

林の奥
苔むす幹に
風が触れ
眠るものたちの
まぶたが揺れる

春は
ひとつの場所に咲かず
地より
天より
音もなく
満ちてくる
春信幽光
(しゅんしん ゆうこう)

春信水辺開  
幽花映白苔
枝頭先葉雪
晴嶺照幽隈

読み下し:  
春の信 水辺に開き
幽かな花 白苔に映ゆ
枝頭 葉に先んじて雪
晴れたる嶺 幽き隈を照らす

訳:  
春のしるしが水辺に咲き、
白い花が苔に映える。
枝先には葉に先んじて
雪のような花が咲き、
晴れた山の峰が、
静かな谷間を照らしている。

4月22日 怒塚山〜金甲山

緑深きところにて

緑深きところにて
朝の光がそっと降り
露をまとった花の青が
静けさの底をひらいた

草を分ける細道の奥
風がひとすじ流れ
葉の影が肩に触れ
山は歩く者を迎えていた

ふと立ち止まると
名もなき花が息づき
その小さな灯りが
胸の奥をやわらかく揺らした

緑深きところにて
私はただ、深く息をした
山の時間が流れ込み
心は静かに澄んでいった
緑間静思
(りょくかんにせいしす)

緑深風自来
花青照行人
停歩聞山息
澄心与木隣

読み下し:  
りょくしんにして風 自(おのず)から来たり
花青(かせい) 行人(こうじん)を照らす
歩を停めて 山息(さんそく)を聞けば
心 澄みて 木(こ)と隣(とな)る

訳:
深い緑の中、風がそっと流れ
青い花が、歩く者を静かに照らす
ふと歩みを止めれば、山の息づかいが聞こえ
心は澄み、木々と寄り添うようになる