稜線の下、春の息づかい
湿原には、野焼きの黒がまだ残り、
風がそっと灰を撫でてゆく。
その静けさの底で、
新緑だけが柔らかく光を返していた。
擬宝珠山の登り口、
斜面いっぱいに白い灯がともる。
サンカヨウの花びらは、
朝露を抱いて透きとおり、
山の息づかいをそのまま映していた。
象山の稜線に出れば、
風は一段と澄み、
岩の間からイワカガミが
小さな鏡を掲げるように咲いていた。
その光は、野焼きの黒とも、
サンカヨウの白とも違う、
山の深い時間の色だった。
見下ろせば湿原の広がり、
見上げれば稜線の緑。
そのあいだを歩くたび、
花々の息づかいが胸に触れる。
春は声を上げず、
ただこうして、
山のすべてを満たしてゆくのだ。
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花語稜風(かごりょうふう)
湿地春声浅
山光透白華
稜風揺鏡葉
行歩満心和
読み下し文:
湿地に 春声(しゅんせい)浅く、
さんこう 白華(はっか)を透(す)く。
稜風 鏡葉(きょうよう)を揺(ゆ)らし、
行歩(こうほ) 心に和(やわ)らぎみつ
訳:
湿原には浅い春の声があり、
山の光は白い花を透かす。
稜線の風にイワカガミが揺れ、
歩むほどに心は和らいでいく。
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