写真が語り、AIが詩にする山旅(10)


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7月3日 経山・鬼城山

山の古(いにしえ)に花あそぶ

わたしは古き門
長い時を 風とともに過ごし
訪れる者を 静かに迎えてきた

今年もまた
花が道を照らし
旅人の足音が
季節を運んでくる

古の影に
新しい色が触れ
そのたびに
時は少しだけ やわらぐ
花導古径(はなこけいをみちびく)

古径花先導
微光染木陰
行人無語過
春意在深林

読み下し:  
こけい はな さきにみちびき
びこう こかげをそむ
こうじん かたらずしてすぎ
しゅんい しんりんにあり

意:  
古びた道を花が先へと導き
ほのかな光が木陰を染める
旅人は言葉なく歩みを進め 
春の気配は深い林の奥にある

7月9日 森林公園

森の白息、道の青息

森は
白い息を吐いていた
夏の熱を
ひととき忘れさせるように
木々のあいだから
やわらかな白が流れ出す

道は
青い息を返していた
草の色が
霧に溶けきらず
かすかな輪郭を残して

そのあいだを歩くと
世界は
暑さの底に
静かな影をひそめ
ひと息だけ
涼しさが寄り添ってくる
森息白如霧
(しんそく はく ぎょむのごとし)

森息白如霧
径青映湿苔
行人忘暑気
深処得清来

読み下し文:
森の息 白くして霧のごとく、
径の青 湿れる苔に映ゆ。
行く人 暑気を忘れ、
深き処に 清き来たりを得る。

意:  
森の息は霧のように白く、
道の青は湿った苔に映える。
歩く者は暑さを忘れ、
深い場所でひとすじの涼しさを得る。

7月14日 上蒜山

花の声を拾う

草原の風が
花の影を揺らすたび
小さな声が
あなたの歩く速度に寄り添った

拾い上げたその声は
やわらかい午後の色をしていて
蒜山の広さよりも
ずっと近い場所で
そっと息をしていた
拾花微語(しゅうか びご)

草原風細語
孤花影微揺
拾声成一念
随歩入心深

読み下し:
草原に風細かく語り、
孤り咲く花の影ほのかに揺る。
その声を拾えば一念となり、
歩みに随い心の奥へ入る。

意:
草原を渡る風が、かすかな声で語りかけてくる。
ひとつだけ咲く花の影が、そっと揺れて応える。
その小さな声を拾うと、胸の中に静かな思いが灯り、
歩くたびにその思いは、心の深いところへ染み込んでいく。

7月17日 櫃ケ山

緑の深さに触れる

森に入った瞬間、
光の粒がひとつ、肩に落ちた。
それだけで、今日の旅は
もう始まっていたのだと思う。

細い道は、
歩くたびに色を濃くし、
葉の影は、
あなたの歩幅に合わせて揺れた。

倒木の前で立ち止まったとき、
森は急に静かになり、
風だけが
先の景色を知っているようだった。

行けなかった先よりも、
そこで触れた緑の深さが
胸の奥で
そっと灯り続けている。
森深光微(しんしん こうび)

森深光微照
行径緑陰濃
倒木風先去
心中留遠峰

読み下し文:
森深くして光微(こうび)かに照り、
行径(こうけい)緑陰(りょくいん)濃く、
倒木にて風先(ふうせん)に去り、
心中に遠峰(えんぽう)を留む。

意:
森の奥で光がかすかに揺れ、
歩くほど緑の影が濃くなる。
倒木の前では風だけが先へ進み、
心の中に遠い峰がそっと残る。

7月23日 擬宝珠山・象山

夏の峰に花ひらく

空は
青のまま揺らがず、
草の階段は
陽を受けて
柔らかく沈んでいた。

橙の花は
夏の声をひとつにまとめ、
白い花は
その隣で
静かな呼吸を続ける。

歩くたび、
峰の緑が
心の奥へ
少しずつ満ちていった。
夏峰光路(かほう・こうろ)

青空無片雲
草径受陽温
橙花燃夏色
白影伴風痕

読み下し文:
せいくう へんうんもなく、
そうけい ようおんをうく。
とうか かしょくをもやし、
はくえい ふうこんにともなう。

意:
空は雲ひとつなく、
草の道は陽の温かさを受けていた。
橙の花は夏の色を燃やし、
白い影は風の痕跡をそっと添えていた。

7月27日 熊山

尾根の光、森の影をわたる

細い道が緑の奥へ吸い込まれ、
葉の影が静かに揺れていた。
歩みの音は土に沈み、
風だけがそっと先を示す。

枝の間から光がこぼれ、
道の石が淡くひかる。
そのひと粒の明るさが、
今日の旅をそっと照らした。

尾根に出ると、
森の影が長く伸びていた。
その影をひとつ渡るたび、
時間が薄くほどけていく。

振り返れば、
緑の深みがまだ呼んでいた。
光と影のあいだを歩くことが、
ひとつの記憶になっていく。
森影渡光(しんえい こうをわたる)

細径吸深緑  
土音沈歩痕  
尾光渡森影  
旅心静成文

読み下し文:
さいけい しんりょくをすい  
どおん ほこんにしずむ  
びこう しんえいをわたり  
りょしん しずかにふみをなす

意:
細い道は深い緑へと吸い込まれ、
土の音は歩みの跡に静かに沈む。
尾根の光が森の影を渡り、
旅の心はそっとひとつの文となった。